この記事は「広報あやがわ」に掲載されている「健康コラム」向けに、当院の医師が執筆したものを再構成したものです。
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口は災いの元ということわざがあります。不用意な発言は自分自身に災いを招く結果になるため、言葉は十分に慎むべきだという戒めです。勿論、マウスウォッシュで不用意な発言を防ぐことはできませんが、マウスウォッシュで全身の不健康(災い)を防ぐことはできるかもしれないという話をしたいと思います。
マウスウォッシュの話の前に動脈硬化についてお話しします。動脈硬化(※ 厚生労働省HP/ e-ヘルスネット:動脈硬化)とは動脈が硬くなって弾性が失われた状態で血管壁にプラークがついて血管内がせまくなったことにより血栓が生じたりして血管がつまりやすくなった状態です。加齢性変化といって歳を重ねるとともに動脈硬化は進展します。血管年齢などという表現もありますね。
次に年齢以上に動脈硬化を増悪させる原因についてです、喫煙、脂質異常症、高血圧症、飲酒、ダイアベティ(糖尿病)が知られています。さらに、これら以外に歯周病も動脈硬化を増悪させるといわれています。
歯周病の原因となる歯周病菌は腫れた歯肉から容易に血管内に侵入し全身に回ります(※ 日本臨床歯周病学会HP:歯周病について)。歯周病菌の細胞壁に含まれる毒物は血糖値に悪影響を与え、血管の炎症を持続させ、動脈硬化を増悪させます。つまり、歯周病予防をしっかり行わないと動脈硬化(血管年齢)が進んでしまいますよということです。
逆に口の中の細菌を減らすと血糖値が改善するという報告もあります。大阪大学の研究で殺菌効果のあるうがい薬でうがいをする習慣があると口の中の歯周病菌が減り、血糖値が改善すると報告しています(※ 仲野和彦:Scientific Reports,2024)。この報告のなかでクロルヘキシジン配合のマウスウォッシュを用いたうがいは家庭で行なうことのできる口腔ケアのなかでも簡便であり、日々の習慣にとりいれやすいとあります。
マウスウォッシュを使う習慣のない方はこの機会に是非とり入れることをお勧めします。しかし、マウスウォッシュだけすればよいというものでもありません。マウスウォッシュには細菌を減らす効果がありますが、汚れを落とすことはできません。マウスウォッシュの効果を最大限に得るためには使用前にしっかりと歯磨きをすることが大切です。フロスや歯間ブラシを使うことも有用です。
また、マウスウォッシュは治療薬ではありませんので、すでに発症しているむし歯や歯周病には歯科医師による専門的な治療が必要です。歯科医院で適切な治療やアドバイスを受けて下さい。歯周病予防を目的とした場合、クロルヘキシジンやトリクロサンなど殺菌作用のある成分を含むものがよいとされています。実際にはたくさんの種類が市販されており、目的や体質、使用感などを考慮して選ぶ事が大切とされています。かかりつけの歯科医院をもち、アドバイスを受けながらご自身にあったマウスウォッシュを見つけて下さい。
「若返る!? マウスウォッシュと 歯磨きで」

堀口 正樹
- 日本糖尿病学会専門医
- 日本内科学会認定医