この記事は「広報あやがわ」に掲載されている「健康コラム」向けに、当院の医師が執筆したものを再構成したものです。

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日本高血圧学会は今年の8月に高血圧診療のためのガイドラインを6年ぶりに改訂しました。ガイドラインとは専門家が話し合って決めた、その疾患の診断や治療などの指針のことです。以下に今回の改訂のポイントを書きます。(血圧の基準値や目標値は診察室血圧と家庭血圧では違うのですが、以下はすべて診察室血圧の値です。)

高血圧の定義

高血圧と診断する基準値は140/90以上でこれまでと変わらなかったのですが、降圧目標値は75歳以上も最高血圧130/80未満へと引き下げられました。2019年発行のガイドラインでは75歳未満が130/80未満、75歳以上は140/90未満でしたが、これで全年齢の降圧目標値が130/80未満となりました。2014年発行のガイドラインの降圧目標値は75歳未満が140/90未満、75歳以上は150/90未満だったので、ガイドライン改訂のたびに降圧目標が厳格になってきているのが分かります。理由は、国内外の最新の研究で高齢であっても脳卒中などの予防につながるとする結果が報告されていることです。最高血圧130未満を目標に治療すると、脳卒中や心臓病のリスクが17%下がり、心臓病で亡くなるリスクも26%下がったなどとされています。 また名称も変わりました。以前は「高血圧治療ガイドライン」でしたが、今回は「管理」が加わり、「高血圧管理・治療ガイドライン」となりました。これまで以上に「生活全体で血圧を管理する」ということが強調されるようになりました。

高血圧を予防する

具体的な生活習慣の改善策として、▽食塩摂取量を1日6グラム未満に減らす、▽カリウムを含む食品を積極的に食べる(野菜を1日3 5 0 グラム、果実を1 日200グラム)、▽毎日30分以上の有酸素運動(ウォーキングやジョギングなど)に加え、筋力トレーニング(スクワットや腕立て伏せなど)を1日20分、週に2・3回程度行う、▽肥満の是正(BMI25以下)、▽飲酒量を減らす( 1日あたり日本酒で1合、ビールなら500mlまで)、▽禁煙、▽家庭で血圧を測定し、医療機器として国に承認されたアプリなどを使って管理する、ことなどが推奨されています。
陶病院 十枝 健一

十枝 健一
循環器内科・内科
  • 日本内科学会認定内科医